#6「異世界転生と俺」
「…」
なんだろう。
「……」
なんだか。
「………!」
声が聞こえる。
「…………!」
なんだ?
「……………!」
大事なことなのか?
「……………て!」
て?
「……………けて!」
けて?
「……………すけて!」
すけて?あー、なるほど、分かったぞ。
「「助けて!!」」
だ。正解かな?
「私の名前は………です!助けてください!!」
名前がよく聞こえないです。
「私の名前は………です!!」
ごめん、聞こえないみたいだ。
「では、貴方様のお名前は?」
俺の名前は。
「はい」
俺の名前は。
「はい」
俺の、名前、は。
「えっと、お名前は…?」
名前…名前…。
「思い出せないのですか?」
いや、馬鹿な、そんなことは、しかし、でも。
「思い出せない!!!!」
「思い出せない」と叫んだ途端、自分の意識がハッキリしてくる。
ここは帰りの電車の中だ。
終電であるこの電車は、空席の方が多い程のスカスカ具合であった。
状況をまとめよう、まずは深呼吸を1度する。
一体なんだったんださっきのは?
天から突然女の声が聞こえて来た気がしたのだが、もしかして俺は結構疲れているのか。
確か彼女は、助けて欲しいと言った気がするが、何から助けて欲しいのか、何で助けて欲しいのか、何も分からないまま終わってしまった。
うーん、謎だ。
もにゃもにゃと1人で唸っていると突如電車が止まる。
どうしたんだ?
ざわつく車内に、アナウンスが流れた。
「当列車は快速成田行きから、快速異世界行きに路線変更します。繰り返します。当列車は快速成田行きから、快速異世界行きに路線変更します」
異世界?馬鹿馬鹿しい、早く家に帰ってアニメを見たいんだ俺は。
「なお、皆様の世界では、この列車は脱線したことになっております。つまり、皆様は死亡している扱いになっておりますのでご理解ください」
いよいよおかしくなってきたな、現実世界だと?死んでるだと?じゃあここに居る俺らは何なんだよ。
「今の皆様は魂だけの存在ですね。肉体は現実世界で死亡しているので、魂だけリサイクルさせていただきました」
魂だと!?
「短い説明になってしまいましたが、そろそろ終電になります」
いや、待て、説明をーーー
「次は終電、終電、惑星レガリエになります。お気をつけてお下りください」
こうして、突然に俺の異世界生活が始まったのだった。
次回「社畜だけど、終電乗ったら異世界いったんだが」第2話「レガリエにようこそ!!」
続く。